越境ECで成功を収めた日本企業の代表例としては、無印良品やユニクロが挙げられます。
無印良品は、シンプルで高品質な商品ラインナップが欧米やアジア諸国で高評価を得ており、
現地の生活様式に合った商品展開を行っています。
たとえばヨーロッパ向けには、環境意識の高い層に向けてリサイクル素材の雑貨シリーズを展開し、環境意識とシンプルな美しさが評価されました。
中国市場での成功事例としては、大手化粧品ブランド資生堂がWeChatミニプログラムを使い、中国の若年層向けに商品を販売。
中国の有名インフルエンサー「キーオピニオンリーダー(KOL)」と連携し、ライブコマース形式で紹介することで、数時間で数千万円の売上を記録しました。
文化や購買習慣に合わせた戦略が功を奏した典型例です。
また、愛知県の伝統工芸メーカー「名古屋染工房」は、着物柄のハンカチを中国市場向けに「和風ギフト」として展開。
タオバオモールとRED(小紅書)でのプロモーションを通じ、観光客やギフト需要に応えることで売上が前年比3倍になりました。
越境ECで特に人気がある商品カテゴリーには、「コスメ・スキンケア」「アニメ関連商品」「健康食品」「キッチン用品」などがあります。
中国市場では、日本製スキンケア商品への信頼が高く、「敏感肌向け」「無添加」「医薬部外品」といったキーワードが好まれます。
広島のスキンケアブランド「美肌の雫」は、中国人KOLに商品を使ってもらい、小紅書でレビュー投稿。
クレンジングジェルが「肌に優しい」と話題になり、月間注文数が10倍に跳ね上がりました。
また、健康志向の高まりから、日本の青汁や酵素ドリンクも人気です。
「ダイエット中の朝食代わりに」といった具体的な利用シーンを紹介することで、中国SNSユーザーの共感を得て、自然拡散されやすくなります。
地方の中小企業でも、越境ECで成功した例は多数あります。
新潟の漬物メーカー「山清食品」は、海外のビーガン層に向けて「動物性原料不使用・グルテンフリー・発酵食品」というポイントを前面に打ち出し
アメリカの健康志向層に大ヒットしました。
中国向けには、山梨のワイナリーが「日本産ワイン」というストーリーとともに、小紅書やWeChatで情報発信。
中秋節や春節などのギフトシーズンに合わせたキャンペーンを展開し、法人向けの贈答需要を獲得しています。
中国市場では「物語性」と「贈り物ニーズ」を掛け合わせることが鍵となります。
越境ECはBtoCだけでなく、BtoBでも多くの成功例があります。
大阪の産業機器メーカー「テクノメカ」は、Alibabaと自社サイトを併用し、海外バイヤーに向けた商品紹介ページを多言語化。
製品の使い方や導入事例を動画で紹介することで、商談件数が前年比150%に増えました。
中国向けのBtoB事例では、岐阜の陶器メーカーが中国のホテル・レストランチェーン向けに美濃焼を販売。
取引先が好むカラーや形状をヒアリングし、OEM生産を行うことで継続的な取引を確保しました。
WeChatやAlibaba上でのビジネス交渉がスムーズだったことも成功の一因です。
北海道のスイーツブランド「雪の菓子工房」は、台湾市場で甘さ控えめの味に調整し、「台湾人の味覚に合う」と話題になりました。
また、パッケージも中国語で「幸福の味」と記載し、旧正月限定バージョンを用意。
SNSキャンペーンでクーポン配布を行ったところ、初月で2,000セットが完売しました。
さらに、中国市場向けの事例として、京都の抹茶ブランド「翠の園」があります。
現地の若者に合わせた「抹茶ラテ」や「抹茶スイーツ」を展開し、パッケージには簡体字とQRコードを印刷。
WeChatに飛ばして商品情報や調理動画を見せる工夫を施し、若年層の支持を得ました。
SNSとインフルエンサーを活用した成功例も多数あります。
東京のアクセサリーブランド「iroiro」は、海外のInstagramインフルエンサーと連携して、
彼女たちの日常コーデに自然に取り入れてもらう戦略を取りました。
その結果、「かわいい!どこで買えるの?」というコメントが殺到し、1週間で売上が前月比400%に。
中国市場では、KOLと呼ばれるインフルエンサーとのコラボが主流です。
大阪の日本酒メーカー「大和の雫」は、Douyin(抖音)で有名なKOLとライブ配信を行い
視聴者からの質問にリアルタイムで答えながら商品紹介。
視聴中に直接購入できる仕組みにより、その場で数千本を売り上げました。
成功企業は、同時にリスク管理にも力を入れています。
例えば、広島の和菓子メーカー「菓匠ほほえみ」は、海外輸送での高温・湿度対策として、真空パック+クール便対応を採用。
アメリカの夏でも品質を保ち、口コミ評価を落とさず販売を継続できました。
中国市場向けでは、模倣品対策として、QRコードによる正規品認証システムを導入した企業もあります。
石川県の伝統工芸品ブランド「金沢彩」は、商品ごとにシリアルコードを印刷し、WeChat上で本物認証ができるようにしたところ
安心して購入できると中国ユーザーから高評価を得ました。
「売れたら終わり」ではなく、「信頼を守り続ける」工夫が、越境EC成功の持続性を支えています。